東京上野・国立科学博物館「毒展」で生物の毒について学んでみた!

目次

国立科学博「毒展」に行ってみた

東京の上野にある国立科学博物館で「毒展」ってどんなものだろう?

毒って聞くと怖いけど、実は薬にもなったりして役に立つこともあるんだって?

身の回りにある毒を知ることで、どんなことに気をつければいいのか、わかるようになるかな?

わたしは動物ライター/デザイナーですが、もともと医学や医療にもとても関心があり、本などを読んで勉強していました。「毒展」の開催を知り「これはいかねば!」と0.1秒で即断。期待以上の展示内容に興奮しました。

毒展は令和5年2月19日で終わってしまいますが、幅広い展示の中から「生物」「動物」に関係する内容をご紹介します!

日常にぜひ活用してくださいね!

まずは腕だめし?クイズに答えてみよう!

毒展に入場すると最初のほうに、クイズのチラシが置いてあります。

そして展示の一番最後のあたりに、答えのチラシが置いてあります。忘れずにゲットしましょう。

チラシの内容そのまま出題するのはまずい(気がする)ので、わたしはちょっとアレンジして3問ほど作りました。

①正しい/②間違いで答えてみてください。

Q1. 毒を持つ哺乳類は多く、数十種類に及ぶ。
 ①正解 ②間違い

答えは…

答え:②間違い。毒を持つ哺乳類は数種類しか知られていません。食中毒に関与する動物性自然毒はすべて魚介類に由来します。参考:厚生労働省

Q2. ウナギの生き血を飲むと実は体に良い。
 ①正解 ②間違い

答えは…

答え:②間違い。ウナギやアナゴの血液には毒があります。

ウナギの新鮮な血液を大量に飲んだ場合、下痢、嘔吐、皮膚の発疹、チアノーゼ、無気力症、不整脈、衰弱、感覚異常、麻痺、呼吸困難が引き起こされる。死亡することもある。

参照:厚生労働省

ではどうすればいいの?

よく加熱すると無毒になります。

”ウナギの血清毒は100 kDaのタンパク質。60℃、5分の加熱で毒性を失うので、通常の加熱調理をすれば食品衛生上の問題はない”

参照:厚生労働省

ということです。生のウナギを店頭で見ないのはそういう理由もあるのでしょう。魚屋さん、鰻屋さんがおいしく食べられるようにちゃんと調理してくれているからですね。

Q3. フグの毒は加熱すれば無毒になる。
 ①正解 ②間違い

答えは…

答え:②間違い

フグ毒は加熱をしても消えません。内臓だけでなく皮や身にも含まれることがありますので素人が調理するのは危険です。フグ毒は大変に強力で、トラフグ1匹分の毒量は、約10人分の致死量に相当します。参照:徳島保健所

クイズの答えは合っていましたか?

「毒展」の構成は主に5章から成っていました。

内容

  1. 第1章 毒の世界にようこそ…毒にはどんなものがあるのかをざっくり紹介。
  2. 第2章 毒の博物館…自分の身の回りにあるいろいろな毒や、毒を持つ生き物を紹介。
  3. 第3章 毒と進化…生物が毒によって、または毒とともにどのように進化したのか。
  4. 第4章 毒と人間…人間と毒の関係を見ていきます。人間は毒によって苦しむこともあれば、利用することもあります。
  5. 終章…毒とこれからどのように付き合っていくのかを考えます。

毒は自然毒から人間が作った毒までさまざまなものがあり、一つの毒がいくつもの章でそれぞれ解説されているものも。

毒のある生き物、動物というとどんなものがある?

毒がある生物というとまっさきに思い浮かぶのは何?

うーんと…まずハチ!そしてヘビかな?

会場に入るとまず目に入るのは、巨大なハチとヘビの展示。

人間にとっては身近な、毒を持つハチやヘビ。ヘビやハチ、サソリなどの有毒動物に咬まれたり刺されたりするのが一番身近な「生物由来の毒」ではないでしょうか。

スズメバチなどは市街地に飛んでいるとドキッとします。

蜂の毒は「毒のカクテル」とも呼ばれ、毒液には痛みや腫れ、細胞の破壊やアレルギーを引き起こす成分が含まれます。

どのハチにさされると痛いか自ら研究した人がいるんだって?

ジャスティン・シュミット博士は、自らハチに刺され、その痛さをレベル1から4まで判定したとか。

レベル4ではこう書かれています。

「目がくらむほど凄まじい電撃的な痛み。泡風呂に入浴中、通電しているヘアドライヤーを浴槽に投げ込まれて感電したみたいだ」と書かれています。

「タランチュラホーク」というハチが展示。大きいです。

この研究のすごいところは、動物に毒を与を与え苦しませるのではなく、自らで実験したところです。真似する方はいないと思いますが。

「人々を笑わせ考えさせた研究」であるイグノーベル賞を2015年に受賞したとのこと。イグノーベル賞、笑えることを真面目な研究に与えられる賞で、余談ですが過去には「バナナの皮はなぜすべるのか」「ネコは液体である」などのテーマが、受賞しました。

これは何?

イラガの幼虫。このトゲトゲの先端にさわると、毒の液が抽出されます。

見た目からして触りたくないですね。

有毒な生物というと爬虫類も多いです。

日本では南西諸島にいるハブが有名です。

毒を持つ生き物について考えてみよう!

生き物はどうして毒を持つんだろう?

主な理由は下の2つ。

  • 身を守るため
  • 攻撃のため

最初の質問で「有毒な哺乳類は実は数種類しかいない」というのが正解でした。

有毒な哺乳類は数種類しか知られていませんが、系統的には多岐にわたります。具体的に3つご紹介します。なにかわかるでしょうか?

  • カモノハシ(左上)
  • スローロリス(右)
  • ソレノドン(左下)

くわしく見てみましょう!

カモノハシの後ろ足には毒がある!

カモノハシは聞いたことがありますね。愛嬌のあるユーモラスな姿ですが、実は後ろ足の爪に毒があります。

ジャングルタイムズ
【カモノハシ】毒爪に卵…でも哺乳類!奇妙な生態の不思議 世界にはたくさんの『不思議な動物たち』が […]

日本で暮らしていてカモノハシの後ろ足でひっかかれることはまずないでしょう。哺乳類でもクチバシがあり卵を産むということで、変わった動物なんです。

スローロリスは霊長類唯一毒を持つ

写真右の有毒な動物は、かわいらしい見た目のスローロリス。

ヒジの内側にある分泌腺から毒を出し、唾液と混ぜて毛づくろい。毒を体に塗ることで、寄生虫や外敵から身を守るんだそうです。

ソレノドンって何?絶滅したと思われていた?

3つ目の有毒な動物は、ソレノドン?

ソレノドン、わたしは初耳でした。知らないのも当たり前で、絶滅したと思われていた動物なんです。

モグラやネズミの仲間で歯から猛毒を出すのですが、実際のところよくわからないよう。

academist Journal
謎多き稀少動物「キューバソレノドン」の研究最前線 – 従来の説を覆す! 謎多き稀少動物「キューバソレノドン」の研究最前線 – 従来の説を覆す!

それにしても「いわゆる哺乳類で毒がある動物ってほぼほぼいない」って意外な気がしませんか?

毒に対応した動物たち

一方で哺乳類には、毒に強い体を持っているものがあります。

毒展で展示されていたのは、意外なところで下の2つ。

  • コアラ
  • ラーテル

くわしく見てみます。

かわいいだけでない?コアラが有毒なユーカリを食べられるワケ

「コアラ」が食べているユーカリは実は猛毒って知ってた?

コアラの食物「ユーカリの葉」は繊維質が多く硬い。つまり消化しにくく、青酸化合物、テルペンなどの毒素を含んでいます。

コアラはこのユーカリの毒を分解する酵素を体内に持っています。

長さ2mにもなる盲腸の中で腸内細菌によって消化と解毒をしています。あのようにむしゃむしゃと、無心で食べられるんですね。

ラーテルはコブラの毒にも負けない!

コブラ、ハチ、サソリの毒にも強い哺乳類「ラーテル」っていうのがいるの?

ラーテルもあまり聞いたことがありません。毒展にはく製が展示されていました。

大きさもさほどではなく、体調70センチ、体重10キロといったところ。うちのネコたちが3-5キロなので、ネコ2-3匹程度の重量感です。

見た目はかわいいようにも思えますが、イタチ科の動物でたいへん獰猛。世界一凶暴ともいわれるラーテルは怖いもの知らず。

毒を持つヘビやハチ、サソリに噛まれたり刺されても、毒の効果は一時的で、意識を失っても数時間で回復します。

あれ?ヘビに強いというと思い浮かぶのは、マングースじゃなかったっけ?

と思った方いませんか? 見世物のコブラとマングースのショーを思い浮かべる方もいるかもしれないです。さっそく調べてみました。

マングースは日本にもともといなかったのですが、奄美大島の毒ヘビであるハブ退治のために輸入されました。

毒ヘビのコブラに強いということで日本に輸入されました。実はあまり毒に強いというわけではないようで、俊敏なのでコブラに襲われにくい、噛まれにくいということです。

ところが実際には日本のハブはコブラより攻撃的で動きが早い。マングースは雑食でもともとヘビばかり食べているわけではないので、あえて危険なハブと戦いたくもない。またマングースは昼行性、ハブは夜行性ので出会わない…。

結果、マングースはハブを捕食せずに他の希少動物をおそっていることがわかりました。現在は害獣(外来生物)として駆除されているとか。勝手に連れてこられて勝手に害獣にされて、人間の身勝手を感じます。

海洋には、有毒生物はたくさんいる!

陸上の動物にはほとんど有毒な生き物はいなくて、食品として摂取することにより食中毒が引き起こされることはまずないのです。一方で、

食中毒に関与する動物性自然毒はすべて魚貝類由来であると考えてよい。

参照:厚生労働省

海洋には毒のある生き物がたくさんいて、その数は3万種にのぼります。代表は貝類、クラゲやイソギンチャク、ヒトデなど。貝毒は強力で、わたしは大好きな牡蠣にあたり、何度か痛い目にあいました。

これは毒を持つタコの一種。危険を感じると光ります!

黄色と青の蛍光色、危険を感じてない状態のタコでも、とても食べたいとは思えない色ですね。自然界では蛍光色、目立つ色は、毒があることが実際に多いんですよ。

これは「キオビヤドクガエル」。とても小さいですが猛毒です。赤や黄色、青など鮮やかな警告色で昼行性。薄暗い熱帯雨林でもよく目立ちます。

鮮やかな色、蛍光色自分には毒があるよ!って警告しているんだね!

身近な毒!犬猫などのペットたちには危険なもの

展示会の最初のほうに、ニンゲンが住む住居のイラストと、そこに潜む毒のパネル展示がありました。

展示の最後の方でていねいに答えが解説されています。

イヌやネコに危険なモノというと何が思い浮かぶ?

早速見てみましょう!

  • ぶどう…犬猫の腎障害を引き起こす。
  • 玉ねぎ…玉ねぎの成分が溶血性貧血を起こすとか。
  • にんにく…玉ねぎ同様に溶血性貧血を起こします。

意外な?ダーク・ホースは「ぶどう」。なぜ犬によくないのかはあまり解明されていないのだとか。

  • チョコレート…カフェインやテオプロミンを含み、犬や猫には有害。人間も食べすぎ注意!
  • ピーナツ…犬がピーナツを食べると、下痢、嘔吐、腹部不快感などの消化器系の問題が起こります。神経毒性があるようですが詳細は不明。
  • タバコ(ニコチン)…これは人間にも非常によくないですが、体の小さな犬猫にとってはなおさら有害。
  • アルコール…アルコールは神経毒の一種。
  • アジサイ…ペットにも人間にも有毒で、吐き気や嘔吐を引き起こします。
  • ユリ…イヌやネコが口にすると急性腎障害に。とくにネコにとっては猛毒。

ここで紹介した以外にも毒はあちこちにあります。

実は植物には、イヌやネコにとって有害なものは多いです。

わたしはカサブランカなど花が大好きで家によく飾っていましたが、万一、うちのネコたちが口にしたらいけないので、家に置かなくなりました。

毒か薬か? すべての物質は毒になり、使い量によって薬になる?

また、わたしたちは往々にして「薬は良いもの、役に立つもの」「毒は悪いもの、避けるべきもの」とかんたんに分類してしまいがちです。毒というのは実は使う量によって毒にも薬にもなるんですよ。

いくつか例を見てみましょう!

摂りすぎれば過剰症に、足りなければ欠乏症になる?各種微量元素、微量成分。

ヒ素やクロムは体内に必須の元素ですが、摂りすぎると過剰症や中毒になり、足りないと欠乏症になります。

上は毒展に展示されていた「人体を構成する元素」一覧です。

ためしにわたしが愛用しているサプリの栄養表を見ると、なるほど見事に微量元素が含まれているのがわかります。みなさんも飲んでいるサプリの栄養素を見てみると発見があるかもしれません。

ヒ素は日本人におなじみのひじきにも含まれています。イギリスではヒジキはヒ素を含むということで、食用を禁止する通告が出されました。

ヒジキの毒は乾燥ヒジキを水戻しすると水に流れるため、調理するなどしてバランス良く食べる分には問題はありません。参照元:東京都

カビからできた抗生物質、ペニシリン

ペニシリンという抗生物質もカビからできたの?

ペニシリンは青カビの1種から発見された人類初の抗生物質。なんとパンなどに生える青カビから作られています。

1928年にフレミングという人物が、伝染病の治療薬として発見。肺炎や破傷風など当時治せなかった伝染病から多くの命を救いました。

殺菌作用があり、慢性膿皮症、咽頭・喉頭炎、急性気管支炎、肺炎、外耳炎などに使われます。

麻薬、麻酔としてつかわれる?ケシの花を考えてみよう!

美しい花には毒がある?ケシの花もそうなの?

毒にも薬にもなると聞いて思い浮かぶのはケシです。わたしも大好きな神秘的で美しい花。

ケシの種子は食用としてもよく使われます。

  • アンパンの表面
  • 七味唐辛子
  • 小鳥の餌

薬用としてもケシを原料に、モルヒネ、コデインなど医療用に利用されます。

ところがこの薬用のケシは、麻薬の「阿片」原料ともなります。薬用のケシは「オニゲシ」などがありますが、日本では栽培が禁止されており、厚生労働大臣の許可が必要です。

身の回りにある毒について考えてみよう!

この記事では動物や生物に関連する毒について見てきましたが、毒は生物だけでなく、植物やキノコ由来、はたまた人工的なものまで、いろいろな種類があることを、国立科学博の毒展は教えてくれました。

ふと思い出したのが、猛毒のハブをそのまま漬け込んだハブ酒。調べてみると、ハブは毒を抜いてから漬け込んだわけではなく、アルコールによって無毒化されているんだそうです。毒を持って毒を制す、みたいなものなのかしら?などと想像しました。

毒は奥が深い…少し怖いけれど、興味がある方は、調べてみてくださいね!

国立科学博物館「毒展」公式サイト:国立科学博物館「毒展」

日時:2022年11月1日(火)~2023年2月19日(日) 9時~17時(入場は16時30分まで)
   毎週土曜日は19時まで延長(入場は18時30分まで)
  【休館日】月曜日、12月28日(水)~1月1日(日・祝)、1月10日(火)

アクセス:〒110-8718 東京都台東区上野公園7-20

JR「上野」駅(公園口)から徒歩5分
東京メトロ銀座線・日比谷線「上野」駅(7番出口)から徒歩10分
京成線「京成上野」駅(正面口)から徒歩10分

入場料(税込):【一般・大学生】2,000円 【小・中・高校生】600円
※未就学児は無料です。日時指定予約は必要となりますのでご注意ください。
※障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料。

この記事の執筆者 / 監修者

らみえる
らみえる
▷動物専門・ペット特化ライター&デザイナー
▷慶應義塾大学卒
▷会員制ねこ専用ホテル&シッター・キャッツカールトン代表
▷動物取扱責任者・愛玩動物飼養管理士
▷現在は猫4匹との暮らし。幼少時から犬、リス、うさぎ、鳥、金魚などさまざまな動物と過ごし、生き物を愛してやまない毎日。
▷前職は一般企業で広報、編集校正やってました。
▷多趣味で神社検定とかいろいろ資格あり
ねこねこ王国 | らみえるってこんな人
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