アライグマと聞くと、「かわいい」「ラスカルを思い出す」という印象を持つ方も多いのではないでしょうか。ふさふさのしっぽや器用な手つき、どこか愛嬌のある表情は、写真や映像でも目を引きます。実際、「アライグマ かわいい」と検索する人は少なくありません。
一方で、アライグマは日本では「外来種」「害獣」として扱われ、駆除や被害対策の話題で語られることも多い動物です。同じアライグマなのに、なぜここまで印象が分かれてしまったのでしょうか。
この記事では、アライグマが「かわいいのに嫌われる動物」になってしまった背景を、人間側の事情や社会的な流れから整理します。レッサーパンダと混同されやすい理由にも触れながら、感情ではなく事実ベースで「誤解」が生まれた構造を見ていきます。
なぜアライグマは『かわいい』と思われるのか
アライグマが「かわいい」と感じられる理由は、見た目の特徴と、それが強調されてきた背景にあります。
まず大きいのが、顔立ちとしっぽの印象です。丸みのある顔、目のまわりの模様、ふさふさした長いしっぽは、ぬいぐるみのような愛らしさを感じさせます。写真や動画でも、表情が分かりやすく、人の感情を引きやすいポイントです。
次に、手先の器用さも「かわいい」と思われやすい要因です。前足で物をつかんだり、洗うような仕草を見せたりする様子は、人間の行動に重ねて見られやすく、「賢そう」「親しみやすい」という印象につながります。
さらに大きな影響を与えているのが、アニメや物語の存在です。『あらいぐまラスカル』をはじめ、アライグマは「人になつく」「心を通わせる動物」として描かれてきました。こうしたイメージは世代を超えて共有され、「かわいい動物」という印象を強く残しています。
SNSや動物園での写真も、かわいさを後押ししています。多くの場合、投稿されるのは顔のアップや愛嬌のある瞬間であり、生活環境や生態の全体像が伝わることはあまりありません。そのため、「かわいい」という一面だけが切り取られ、印象として定着しやすくなっています。
このように、アライグマは見た目・しぐさ・物語性の重なりによって、「かわいい動物」として認識されやすくなってきました。しかし、この印象が強まるほど、現実とのギャップも生まれていきます。
それでも『嫌われる』『害獣』と言われる理由
アライグマが「かわいい」と思われる一方で、日本では「嫌われる」「害獣」として扱われることが多いのも事実です。この評価の背景には、アライグマそのものの性格や行動だけでなく、人間社会との関わり方の問題があります。
外来種として日本に持ち込まれた経緯
まず大きな理由が、外来種として日本に持ち込まれた経緯です。アライグマはもともと北米原産の動物で、日本の自然環境に昔からいたわけではありません。ペットブームの影響で輸入されたものの、成長すると飼育が難しくなり、飼いきれなくなった結果、野外に放された個体が増えていきました。
その後、アライグマは高い適応力を発揮します。雑食性で食べ物を選ばず、手先が器用で、さまざまな環境に順応できるため、人里や農地、住宅地の近くでも生き延びることができました。この結果、農作物被害や建物への侵入といった問題が各地で起こるようになります。
人の生活圏に適応してしまった結果
こうした被害が積み重なる中で、「かわいい動物」というイメージとは対照的に、生活に被害を与える存在としての側面が強調されるようになりました。その象徴として使われるようになった言葉が「害獣」です。
ただし、「害獣」という言葉は、アライグマが本来持っている性質を表しているというよりも、人間の生活圏と衝突した結果として生まれた評価だと言えます。アライグマ自身が意図的に問題を起こしているわけではなく、生きるために行動した結果が、人間社会にとって都合の悪いものになってしまったのです。
このように、アライグマが「嫌われる」「害獣」と言われる背景には、外来種として持ち込まれた歴史、人間側の飼育や管理の問題、そして環境の変化があります。評価だけを見るとアライグマが悪者のように感じられますが、そこには人間社会の選択と責任が大きく関わっています。
『害獣』という言葉が生む誤解
アライグマを語るとき、よく使われる言葉が「害獣」です。この言葉は分かりやすい一方で、アライグマに対する理解をかえって歪めてしまう側面があります。
「害獣」という表現は、本来は人間の生活に被害をもたらす状況を指すための言葉です。しかし、言葉だけが一人歩きすると、「アライグマ=悪い動物」「存在そのものが問題」という印象を与えてしまいます。こうして、問題の原因が動物そのものにあるかのように受け取られがちになります。
実際には、アライグマが日本で問題視されるようになった背景には、人間側の選択があります。ペットとして輸入し、飼育しきれず、自然に放してしまったこと。野生化した後も、十分な対策や管理が追いつかなかったこと。これらが重なった結果、被害が拡大しました。
にもかかわらず、「害獣」という言葉でひとまとめにしてしまうと、なぜそうなったのかという経緯が見えなくなります。「かわいいのに嫌われる」という矛盾も、この言葉によってさらに強調されてしまうのです。
また、「害獣」という表現は感情を刺激しやすく、恐怖や嫌悪感を増幅させます。その結果、冷静に状況を理解したり、長期的な視点で問題を考えたりすることが難しくなります。本来必要なのは、感情的なラベルではなく、事実と背景を分けて考えることです。
アライグマは「害獣だから問題」なのではなく、外来種として人間社会と衝突する状況が生まれてしまった動物です。この視点を持つことで、「かわいい」「怖い」「嫌い」といった極端な印象から一歩離れ、現実を正しく捉えやすくなります。
レッサーパンダと混同されることで起きる二次的な誤解
アライグマが誤解されやすい理由のひとつに、レッサーパンダとの混同があります。見た目が似ていることから、「同じ仲間」「似た生き物」という印象を持たれやすく、それがさらなる誤解を生んでいます。
レッサーパンダは、赤茶色の体色や丸みのある体つき、木の上で過ごす穏やかな生態から、「かわいくておとなしい動物」というイメージで語られることが多い存在です。一方、アライグマは環境への適応力が高く、人の生活圏にも現れるため、行動が目立ちやすく、問題視されやすい動物です。
この二つが混同されることで、「かわいい見た目なのに危険」「見た目にだまされる動物」といった印象が強まり、アライグマに対する警戒や嫌悪感が必要以上に増幅されてしまうことがあります。また逆に、レッサーパンダに対しても、「アライグマと同じような動物なのでは」という誤解が生まれることがあります。
しかし、実際にはレッサーパンダとアライグマは分類も生態も異なる、まったく別の動物です。見た目が似ているからといって、同じ性質や立場で語ることはできません。違いを知らないまま一括りにしてしまうことが、誤解を連鎖させているのです。
レッサーパンダとアライグマの違いを正しく知ることで、「かわいい」「怖い」といった感情だけで動物を判断することから離れやすくなります。見た目ではなく、生態や背景を見る視点を持つことが、誤解を減らす第一歩になります。
レッサーパンダとアライグマは見た目が似ているため、混同されやすい動物です。
写真での見分け方や、生態の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ レッサーパンダとアライグマの違い|写真で一瞬!見分け方チェック
まとめ
アライグマは、「かわいい見た目」と「嫌われる存在」という、相反する評価を受けやすい動物です。しかし、その背景をたどっていくと、問題の多くはアライグマ自身ではなく、人間側の選択や社会の仕組みによって生まれてきたことが分かります。
ペットとして輸入され、飼育しきれずに野外へ放されたこと。外来種として定着したあと、十分な理解や対応が追いつかなかったこと。そして、「害獣」という言葉で一括りにされてきたこと。こうした積み重ねが、アライグマに対する誤解を強めてきました。
また、レッサーパンダと見た目が似ていることも、誤解を広げる一因です。かわいいかどうか、危険かどうかという感情だけで判断してしまうと、動物の本当の姿や背景が見えなくなってしまいます。
アライグマをめぐる問題を考えるときに大切なのは、「動物が悪い」と決めつけることではなく、なぜその状況が生まれたのかを知ることです。正しく知ることで、動物を見る視点は少しずつ変わっていきます。
見た目やイメージだけに左右されず、背景や生態に目を向けること。それが、レッサーパンダやアライグマをはじめとした動物たちを理解するための、いちばんの近道です。
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この記事の執筆者 / 監修者

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動物専門・ペット特化のWebライター・ディレクター・デザイナー。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、大手企業で広報や編集校正の仕事を経て、猫専門ペットホテル猫専門ペットホテル・キャッツカールトン横浜代表、動物取扱責任者、愛玩動物飼養管理士。
幼少期から犬やリス、うさぎ、鳥、金魚など、さまざまな動物と共に過ごし、現在は4匹の猫たちと暮らしています。デザインと言葉で動物の魅力を発信し、保護活動にもつなげていきたいと思っています。
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