熊の食べ物まとめ|鮭・どんぐり・はちみつ・スズメバチまで!ヒグマとツキノワグマの食性を詳しく解説

のこと。マルシェ兵庫ペット医療センター

熊の食べ物は、季節や地域によって大きく変わります。冬眠明けは草や新芽、夏は果実や昆虫、秋は高カロリーの餌でエネルギーを蓄える——。本記事では、ヒグマとツキノワグマの“食の戦略”を、季節別・地域別にやさしく解説。はちみつやスズメバチ、鮭との関係まで、写真と図で整理します。

目次

🐻 熊は何を食べているの?(総論:雑食の理由)

熊は雑食ですが、単に「何でも食べる」わけではありません。切歯・犬歯・臼歯が揃う歯の形、繊維も動物質もこなす消化特性、そして卓越した嗅覚と広い行動圏——これらの“体のつくり”が、季節や場所に応じて最適な餌を選ぶ柔軟性を支えます。結果として、春は消化しやすい植物、夏は果実や昆虫、秋は脂質の多い餌へとシフトします。


🌿 熊は植物も動物も食べる「雑食動物」

熊は「雑食性(ざっしょくせい)」の動物です。
つまり、植物だけでなく、動物の肉や魚、昆虫なども食べるということ。
一般的に、熊の食生活は植物性が7割、動物性が3割といわれていますが、これはあくまで平均的な割合。実際には地域や季節によって大きく異なります。

春には新芽や草を食べて冬の間に減った栄養を補い、夏には果実やアリ・ハチの幼虫なども口にします。
秋になると、どんぐりや栗、鮭など高カロリーな食べ物を選び、冬眠に備えて体に脂肪を蓄えるのです。
熊は「今ある自然の恵み」を最大限に活かす、柔軟な生き方ですね。


🍂 食べ物の種類は季節と環境で変化する

熊の食生活は、季節とその土地の環境に大きく左右されます。
北海道のヒグマは、秋に川へ向かい鮭を捕まえる一方で、本州のツキノワグマは森で木の実やどんぐりを探します。

また、山の実りが少ない年(凶作)には、熊が人里に出てくることもあります。
これは“人間の食べ物を狙っている”というより、単に自然の食料が足りないから。熊はその年の森の状態を感じ取りながら、食べ物を求めて行動しているのです。


🏞️ ヒグマとツキノワグマに共通する食性とは

ヒグマもツキノワグマも、どちらも基本は雑食で臨機応変
春には山菜や草、夏には果実や昆虫、秋には木の実や魚などを食べ、冬眠に備えて体重を増やします。

また、どちらの熊も“匂い”に非常に敏感です。
森の中で食べ物を見つけると、数キロ離れていても察知できるほど。
この嗅覚と適応力が、熊を自然界の中で長く生き延びさせてきた理由といえるでしょう。

植物も動物も、必要なときに必要なだけ。
熊の食生活には、無駄のない自然のリズムが息づいているのです。

🏔️ ヒグマとツキノワグマの食べ物の違い

日本に生息する熊は、北海道のヒグマと、本州・四国のツキノワグマの2種類。
どちらも同じ雑食動物ですが、暮らす環境がまったく異なるため、食べるものや食べ方にもはっきりとした違いがあります。


🐾 ヒグマ(北海道)—魚や肉も食べる大型種

ヒグマは北海道だけに生息する、日本最大の陸上動物です。
体が大きく、筋肉量も多いため、ツキノワグマよりは動物性の食べ物を多く取り入れるのが特徴ですが、植物性の食べものが基本です。

春は山菜やフキ、草の新芽などを食べて体力を回復し、夏から秋にかけては川を遡上する鮭を捕まえて脂肪を蓄えます。
また、鹿や小動物の死骸を食べたり、時には昆虫や木の実も口にします。

秋の北海道・知床や登別では、川辺で鮭をくわえて歩くヒグマの姿が見られます。
この行動は単なる食事ではなく、冬眠前のエネルギー補給
ヒグマは1日20kg以上の食べ物を食べることもあり、冬を生き抜くために、短期間で膨大なカロリーを摂取するのです。


🌳 ツキノワグマ(本州・四国)—植物中心の食性

ツキノワグマは、本州や四国の山地に広く分布しています。
ヒグマより体が小さく、木登りが得意で、主に植物性の食べ物を中心に生活しています。9割が植物依存。

春は若葉やタケノコ、夏はブルーベリーや山ブドウなどの果実、秋にはどんぐりや栗、ナラの実などを好んで食べます。
また、アリやハチの幼虫なども栄養源として取り入れますが、自分から動物を狩ることはほとんどありません。

ツキノワグマにとって、秋のどんぐりはまさに“命の糧”。

どんぐりが凶作の年には、森の中に食べ物が少なくなり、人里に下りて農作物や果樹を食べてしまうこともあります。
こうした自然の豊かさや不足が、熊の行動パターンを左右しているのです。


🍂 地域と季節で変わる“主食”(鮭 vs 木の実)

北海道のヒグマは秋に限って、鮭の遡上が多い地域・年には鮭を“主食級”に食べて脂肪を蓄えます。
とはいえ、一年を通して主食が鮭というわけではありません。春は草や新芽、夏は果実や昆虫、鮭が乏しい年や地域・個体では秋でも木の実(どんぐり・栗・山ブドウ)の比重が高くなります。

一方、本州のツキノワグマは総じて植物中心で、秋は堅果・果実がエネルギー補給の軸に。
要するに、熊の“食文化”は地域×季節×その年の実りで入れ替わる——「その時いちばん確実に太れるものを選ぶ」のが実際のところでしょう。

🌸 季節ごとの熊の食生活(春・夏・秋・冬)

熊の一年は、食べ物とともに動いています。
春の目覚めから冬の眠りまで、季節ごとに食べるものが変わるのが特徴です。
自然の恵みをうまく活かしながら、生きるリズムを作っているのです。


🌱 春 — 雪解けとともに草や山菜を食べる

長い冬眠から目を覚ました熊たちは、まずお腹を満たすことから始めます。
雪解けの山では、フキノトウ・ヨモギ・ミズバショウなどの若葉が顔を出します。
この時期の熊は、新芽や山菜などやわらかい植物を主に食べます。

冬眠中に使い果たしたエネルギーを取り戻すため、消化にやさしい植物性の食べ物を選ぶのです。
また、雪の下で冬を越した昆虫の幼虫や、動物の死骸を食べることもあります。
まだ木の実や果物が少ない時期ですが、熊にとっては“再始動の季節”。
食事を通して、春の森の生命サイクルに戻っていきます。


☀️ 夏 — 果実や昆虫を積極的に食べる

夏になると、森の中には豊富な食べ物があふれます。
ブルーベリーやヤマグワ、キイチゴなどの果実を中心に、アリやスズメバチの幼虫、甲虫類などの高タンパクな昆虫も積極的に食べます。

この時期の熊は、森を広く歩き回りながら食べ物を探します。
果実を食べてフンに種を含ませることで、植物の種まき役としても重要な存在です。
また、夏は繁殖期にあたるため、体力を維持するためのエネルギー補給が欠かせません。
森の恵みを食べることで、次の季節に備える準備が始まります。


🍁 秋 — 冬眠前の食いだめ期。鮭・どんぐり・果実が中心

秋は熊にとって一年で最も食事量が増える季節です。
冬眠を前に、できるだけ多くの脂肪を体に蓄える必要があります。

この時期の熊は、高カロリーな食べ物を最優先に選びます。
ヒグマは川に入って鮭を捕まえ、ツキノワグマはどんぐりや栗、柿、山ブドウなどを集めます。
一日に何十キロも歩き、森の中でエサを探し続けることも珍しくありません。

どんぐりが凶作の年には、熊が人里へ下りてくることもあります。熊が冬を生き抜くために必死に食べ物を求めているのですね。

🍁 冬眠前に食べる量はどれくらい?

熊は冬眠前の約3か月間で、驚くほど大量の食べ物を口にします。


ツキノワグマの観察データによると──1日あたりの摂取量で見ると、体重50〜100kgほどの熊が自分の体重の数%を毎日食べている計算です。

食べ物1日に食べる量約3か月で食べる量個数の目安
ブナの実約1.6kg約144kg約57万個
どんぐり約3.6kg約324kg約11万個
出典:サタデーステーション(テレビ朝日系列)2025年10月25日(土) 石川県立大学 大井徹特任教授解説

ヒグマの場合は1日に約20〜30kgの食べ物を摂ることもあります。これは人間に換算すると、毎日100〜150皿のごはんを食べているようなもの。

この驚異的な食欲で体脂肪を増やし、雪深い冬を乗り切るためのエネルギーを貯めているのです。


❄️ 冬 — 冬眠中はほとんど何も食べない

冬になると、熊は雪深い山の中で冬眠に入ります。
冬眠中は体温と心拍数を下げ、ほとんど動かずに過ごします。
この間、食事も排泄も行わず、秋にため込んだ脂肪だけで生きるのです。

ヒグマのメスは、冬眠中に出産することもあります。
母熊は自分の体の栄養だけで赤ちゃんを育てるため、秋の食いだめがどれほど大切かがわかります。

熊の冬眠は、単なる「眠り」ではなく、自然と調和した生存戦略といえるでしょう。

🌰 森の食べ物(どんぐり・果物・木の実)

熊の食生活を語るうえで欠かせないのが、森の実り。
とくに秋になると、どんぐり・栗・山ブドウなどの木の実が熊の主食になります。
これらは脂肪や糖分を多く含み、冬眠前のエネルギー源として欠かせません。


🍂 秋の主食「どんぐり」は生命線

秋になると、ツキノワグマたちは森を歩き回りながら、どんぐりを探します。
どんぐりは、ブナ・ナラ・ミズナラなどの木から落ちる堅果(けんか)で、高カロリーかつ保存性が高いため、冬眠前の“主食”となります。

熊は、地面に落ちたどんぐりを前足でかき分けて集めたり、木に登って枝を揺らして落としたりします。
ときには「熊棚(くまだな)」と呼ばれる枝の集まりを作り、そこから実を食べることもあります。

どんぐりを多く食べた熊は、体脂肪をしっかりと蓄え、冬の寒さに耐える準備を整えていきます。
熊にとって、どんぐりはまさに“命をつなぐ食べ物”なのです。


🍇 山ブドウ・クリなどの果実も好物

熊はどんぐりだけでなく、森の中にある果実や木の実も大好きです。
夏から秋にかけて実る、ヤマブドウ・マタタビ・クリ・ナナカマドなどは、熊にとってデザートのような存在。

果実には糖分が多く含まれており、効率よくエネルギーを蓄えることができます。
とくにヤマブドウは、香りが強く遠くからでも見つけやすいため、熊が森の斜面を歩きながら枝を折り、実を食べる姿が観察されています。

また、果実を食べた熊のフンには多くの種が含まれており、熊が森の再生を助ける「種まき役」になっているのです。
こうして、熊と森の木々はお互いに支え合う関係を築いています。


🏞️ 凶作の年には人里への出没が増える理由

毎年、どんぐりの実り方には“豊作”と“凶作”があります。
どんぐりが少ない年には、熊が山の中で食べ物を見つけられず、やむを得ず人里へ降りてくることがあります。

畑のトウモロコシやリンゴ、柿などを食べたり、民家の裏山に出没してニュースになるケースも少なくありません。
これは熊が「人間の食べ物を好むようになった」わけではなく、森の食料が不足しているというサインなのです。

熊と人が安全に共存していくためには、森林の実りの状況を見守ることも大切です。
どんぐりが豊かに実る森は、熊にとっても人にとっても安心できる場所。
熊の食生活を知ることは、森の健康を知ることでもあります。

🐟 川の食べ物(鮭など魚類)

熊の食生活の中でも、川での「鮭の捕食」は特別なシーンです。
とくに北海道のヒグマは、秋になると川辺で鮭を狙う姿がよく知られています。
これは単なる“好物”というだけでなく、冬眠を生き抜くための重要な行動なのです。


🦴 ヒグマが鮭を捕まえる理由と方法

ヒグマにとって鮭は、高カロリーで栄養価の高い理想的な食べ物です。
鮭の脂肪には、冬眠中の体を支えるエネルギーがぎっしり詰まっています。
そのため、秋になるとヒグマは川沿いへ移動し、産卵のために遡上してくる鮭を狙います。

捕まえ方はとても巧み。
浅瀬で待ち伏せして前足で鮭をはたき上げたり、流れのゆるい場所で口を使ってすばやくくわえたりします。
ヒグマの優れた視力と反射神経が、このときに活かされるのです。

また、鮭を丸ごと食べるわけではなく、脂肪分の多い卵や皮、頭部だけを選んで食べることもあります。
それほどまでに、効率的に栄養を摂ろうとしているのです。


💤 鮭を食べる行動は冬眠準備のサイン

ヒグマが鮭を食べ始めるのは、ちょうど冬眠前の時期。
つまり「鮭を食べる=冬の準備が始まった」というサインでもあります。

冬のあいだ、ヒグマは一切食べ物を口にしません。
そのため秋には、体重の約3割もの脂肪を蓄える必要があります。
鮭は脂肪とたんぱく質の両方を補える理想的な食料源。
ヒグマが鮭を集中的に食べるのは、冬眠を乗り越えるための本能的行動なのです。

特にメスのヒグマは冬眠中に出産するため、母熊にとって鮭の栄養は、自身と赤ちゃんの命を支えるエネルギーでもあります。


🏞️ 知床や登別などで観察される捕食シーン

北海道の知床半島や登別では、鮭を捕まえるヒグマの姿が観察されています。
川辺に立つその姿は力強く、まさに“自然の象徴”といえるでしょう。
観光地では、熊と人間の安全な距離を保ちながら観察できる「ヒグマウォッチング」や自然ガイドツアーも行われています。

現場では、ヒグマが一日に何匹もの鮭を捕まえる様子や、食べ残しをカラスやキツネが利用する光景も見られます。
このように、鮭をめぐる行動は生態系全体を支える循環の一部となっています。

川と熊、そして鮭。
この3者の関係は、北海道の自然の豊かさとバランスを象徴しているのです。

🍯 ハチを食べる熊(スズメバチ・はちみつ・蜂の巣)

「熊ははちみつが好き」というイメージは、童話やアニメでもおなじみです。
しかし実際の熊が狙っているのは、甘い蜜だけではありません。
熊にとって蜂の巣は、高たんぱくな栄養源の宝庫なのです。


🐝 目的は甘い蜜よりも“幼虫”のタンパク質

熊が蜂の巣を見つけると、まず狙うのは巣の中の「幼虫」。
はちみつよりも、むしろこの幼虫やサナギが主な目的です。
熊は嗅覚が非常に発達しており、地中や木の幹の中にある巣の場所を、数十メートル離れたところからでも見つけることができます。

スズメバチやミツバチの幼虫は、脂肪やタンパク質が豊富。
熊にとってはまさに“天然のプロテインバー”のような存在です。
巣を壊して食べるときも、蜜や巣の一部ごと飲み込んでしまうこともあります。

この行動は、特に夏から秋にかけてよく見られ、冬眠前の栄養補給としても重要な役割を果たしています。


🪵 スズメバチの地中巣を掘り返す行動

熊が好むのは木の巣だけではありません。
地中に巣を作るスズメバチも大好物のひとつ。
地面の下にある巣を見つけると、前足で土を掘り返し、中のハチの幼虫を食べてしまいます。

ハチたちは当然攻撃してきますが、熊の厚い毛皮と脂肪が鎧のような役割を果たし、多少刺されてもほとんどダメージを受けません。
そのため、熊は何度でも巣を掘り返し、根こそぎ食べてしまうこともあります。

この行動の跡は「地面の穴」「周囲に散らばった巣のかけら」として残るため、野外で熊の痕跡を見つけるヒントにもなります。


🧸 「プーさん」のモデルにもなった熊とは?

世界的に知られる「くまのプーさん」は、はちみつが大好きな熊として有名ですが、
そのモデルは実在したカナダ生まれの黒熊“ウィニー”といわれています。
当時のロンドン動物園で飼育されていた彼女は、はちみつをなめるしぐさで子どもたちに人気となり、のちに絵本作家A.A.ミルンの息子・クリストファーが名付け親になりました。

このエピソードが世界に広まり、「熊=はちみつ好き」というイメージが定着したといわれています。

ただし、現実の熊たちは蜜そのものよりも、巣の中にいる幼虫や栄養豊富な巣材を目的にしています。
つまり“プーさんの好物”には、意外とリアルな生態の一面が隠れているのです。

🥩 肉も食べる?鹿や小動物・共食い行動

熊は雑食性の動物であり、植物を中心に食べながらも、ときには肉を食べることもあります。
その目的は「狩り」ではなく、生きるための栄養補給です。
自然界では、食べられる機会を逃さず活かすことが生き残りの鉄則。
熊もまた、その本能にしたがって行動しています。


🦌 弱った鹿やイノシシを食べることも

ヒグマやツキノワグマは、基本的に自分から積極的に狩りをすることは少なく、多くの場合は死んだ動物の死骸(しかばね)を食べる「スカベンジャー(腐肉食者)」です。
雪解けのころ、冬を越せなかった鹿やイノシシの死体を見つけると、それを貴重なタンパク源として食べます。

ただし、北海道のヒグマの中には、まれに弱った鹿を襲う個体もいます。
とくに体力のある雄グマは、機会があれば短距離で獲物を追い詰め、仕留めることもあるのです。

このような行動は「肉が好きだから」ではなく、限られた季節に効率よく栄養を得るための戦略です。
熊にとって、肉は冬眠に備えるための重要なエネルギー源なのです。


🐻‍❄️ 共食いは珍しくない自然界の現象

熊の世界では、「共食い」も特別なことではありません。
とくにヒグマの場合、繁殖期に雄が子熊を襲うことがあります。
これは、母熊を再び発情させて自分の子孫を残すための本能的な行動とされています。

また、食料が極端に不足した年には、弱った個体が別の熊に襲われて食べられることも。
こうした行動は残酷に見えるかもしれませんが、自然界では種の維持とエネルギー循環の一部として起きている現象です。

登別や知床の熊牧場などでも、複数の熊が同じ空間にいるときに力関係の争いが起き、弱い個体が攻撃されるケースが確認されています。
それほど熊の社会は厳しく、競争の中で生きています。


⚠️ 「肉の味を覚えた熊」は本当に危険?

ニュースなどで耳にする「肉の味を覚えた熊」という言葉。
これは人間の食べ物やゴミを食べた経験を持つ熊が、人の生活圏に再び現れるようになった状態を指します。

一度人間の食べ物の味を知ると、熊は「安全で簡単に手に入る食べ物」として学習してしまいます。
その結果、山を下りて民家やキャンプ場に出没するリスクが高まるのです。

つまり「肉の味を覚えた熊」というよりも、“人間の食べ物に慣れた熊”が危険というのが正確な表現です。
人里で食べ物を与えたり、ゴミを放置したりすると、熊との距離が縮まり、結果的に人身被害を招くおそれがあります。

熊を守ることは、適切な距離を保つことから。
自然の中で熊が本来の食べ物を得られるようにすることが、人と熊の共存への第一歩です。


🌾 人里に出る熊の食べ物(ゴミ・農作物など)

近年、「熊の出没」が全国ニュースになることが増えています。
多くの場合、その背景には“食べ物不足”があります。
森の実りが少ない年や気候変動によって、熊は本来の食料である木の実や果実を十分に得られず、やむを得ず人里に姿を現すのでしょう。


🍂 どんぐり不足で山を下りる熊たち

ツキノワグマの主食であるどんぐりが凶作の年には、熊たちは森の中で食べ物を見つけられなくなります。
このため、山を下りて田畑や果樹園へ向かう個体が増加します。

特に秋は冬眠前でエネルギーを蓄える大切な時期。
どんぐりが足りないと、熊はより危険を冒してでも人の生活圏にある食べ物を探そうとするのです。

森林の豊かさは、熊と人の距離を決める大きな要因。
豊作の年は熊が山で静かに暮らし、凶作の年には出没が増える──このサイクルは昔から繰り返されています。


🌽 トウモロコシ・スイカなど畑の被害例

熊が人里で狙うのは、甘くて柔らかい作物です。
トウモロコシ、スイカ、カボチャ、リンゴ、柿などが代表的。
特にトウモロコシ畑は、夜間に熊が入り込んで倒したり食い荒らしたりする被害が多く、1頭でも数十本を食べてしまうことがあります。

また、家の近くに実った柿の木や、果樹園のリンゴも人気のターゲット。
強い前足で枝を折り、実を一気に食べてしまいます。
こうした被害は農家にとって深刻ですが、熊にとっては“生きるための行動”でもあります。


🏡 人間との共存のためにできること

熊の出没を減らすには、「人の食べ物を学習させないこと」が最も重要です。
一度でも人里で簡単に食べ物を手に入れると、熊はその経験を覚え、再び同じ場所に現れるようになります。

そのためにできることは次のとおりです:

  • ゴミや残飯を屋外に放置しない
  • 果樹の実を早めに収穫する
  • 畑や民家の周囲に電気柵を設置する
  • 山間地域ではラジオや鈴で人の存在を知らせる

また、地域ぐるみで出没情報を共有することも大切です。
熊を排除するのではなく、**「近づけない環境を整える」**ことで、人も熊も安心して暮らせる距離を保つことができます。

💩 熊の食痕と糞から分かる食性

熊の食べ物を直接観察するのは難しいですが、実は「食べたあとの痕跡」から多くのことがわかります。
森の中を歩くと、木の皮がはがれた跡や爪痕、そして独特な形のフンが見つかることがあります。
これらは、熊がどんな場所で、どんな食べ物を選んでいるのかを教えてくれる大切な手がかりです。


🌳 木の皮をはいだ跡・爪痕に注目

木の幹に大きな爪痕や皮がはがれた跡を見たことはありませんか?
それは熊が樹皮の内側にある樹液や昆虫を食べた跡かもしれません。
特に春先は、木の皮の下に甘い樹液が流れる時期。
熊は前足で木を引っかいて皮をはいで、そこに集まる樹液やアリ・カミキリムシの幼虫をなめ取ります。

また、爪痕は熊の通り道や行動範囲を示すサインにもなります。
木の高さ2〜3メートルの位置にある爪痕は、自分の存在を示す“マーキング”としても使われています。
これらの痕跡は、熊の生活圏を知るうえで貴重な情報源なのです。


💩 糞からわかる熊の食事メニュー

熊のフンには、その時期に食べたものがそのまま残っています。
どんぐりの殻、ベリーの種、昆虫の外骨格、魚の骨など、季節ごとに中身が大きく変わるのが特徴です。

春のフンは草や植物の繊維が多く、夏は果実の種や昆虫の殻が目立ち、秋はどんぐりや栗などの堅果類がほとんどを占めます。
北海道では、鮭の骨やウロコが混ざっていることもあります。

研究者はこうしたフンを分析することで、「その地域で熊が何をどれくらい食べているのか」を調べています。
つまり、フンは“熊の食事記録ノート”なのです。


🔄 観察から見える自然の循環

熊の食痕やフンは、単なる痕跡ではなく、森の生態系のつながりを物語るサインでもあります。
熊が果実を食べてフンをすることで、種が森のあちこちに運ばれ、新しい植物が芽を出します。

また、熊が残した鮭の骨や食べ残しを、カラスやキツネ、昆虫が利用するなど、熊の食事行動が他の生き物たちの命を支えているのです。

熊は“森の掃除屋”であり、“森の種まき職人”でもあります。
その足跡ひとつ、フンひとつにも、
然がつながりながら生きるしくみが詰まっているのです。

🐾 まとめ|熊の好物一覧と人との共存

熊は、どんぐり・鮭・はちみつ・果実など、森と川が育む豊かな食べ物をバランスよく食べて生きています。
その食生活は単なる“雑食”ではなく、自然の恵みを無駄なく使う、理にかなった生き方といえるでしょう。


🍀 季節ごとに変わる熊の「好物まとめ」

熊の食べ物は季節によって大きく変わります。

季節主な食べ物特徴
草・山菜・昆虫の幼虫冬眠明けの栄養補給
果実・昆虫・ハチの幼虫高タンパクで活動的な時期
どんぐり・栗・鮭冬眠前のエネルギー蓄積
(冬眠中)何も食べない脂肪のみで生きる

熊の一年は、食べ物の移り変わりそのもの。
それぞれの季節に合わせて食べ方を変えることで、過酷な自然環境の中でも生き延びることができるのです。


🌏 熊の食べ物から学ぶ自然のバランス

熊が食べるどんぐりや果実は、森の木々が育む命。
そして熊が食べたあとのフンや食べ残しは、他の動物や植物を育てる栄養となっていきます。

つまり、熊の食事行動は森の再生を支える循環の一部
私たち人間が熊の食生活を知ることは、自然のつながりやバランスを理解する第一歩でもあります。

「熊が食べているもの=森の健康のバロメーター」。
熊が豊かに食べていられる森は、人にとっても安全で豊かな森なのです。


🕊️ 熊と人が安全に共存するために

熊が人里に現れるのは、森の食料が減っているサイン。
私たちができるのは、熊を“追い払う”ことではなく、人と熊が出会わない環境を整えることです。

・ゴミや食べ残しを屋外に放置しない
・畑や果樹園を柵で守る
・登山やキャンプでは食べ物を密閉して保管する
・熊鈴やラジオで人の存在を知らせる

こうした小さな工夫の積み重ねが、熊との無用な衝突を防ぎ、共存の道を開いていきます。

熊は森を守る仲間であり、自然の一員。
彼らの食生活を知ることは、人と自然がともに生きる未来を考えるきっかけになるはずです。


🌿 この記事で紹介した熊の食べ物一覧

  • どんぐり・栗・ブナの実
  • 山ブドウ・マタタビ・ナナカマド
  • 鮭・魚類・昆虫・ハチの幼虫
  • 草・山菜・タケノコ
  • 果実・トウモロコシ・柿

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この記事の執筆者 / 監修者

らみえる
らみえる
動物専門・ペット特化のWebライター・ディレクター・デザイナー。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、大手企業で広報や編集校正の仕事を経て、猫専門ペットホテル猫専門ペットホテル・キャッツカールトン横浜代表、動物取扱責任者、愛玩動物飼養管理士。
幼少期から犬やリス、うさぎ、鳥、金魚など、さまざまな動物と共に過ごし、現在は4匹の猫たちと暮らしています。デザインと言葉で動物の魅力を発信し、保護活動にもつなげていきたいと思っています。
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