テングザルProboscis monkey

カテゴリ | 中ぐらいの動物 |
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種類 | テングザル |
英語表記 | Proboscis monkey |
大きさ | オス70~75㎝ メス50~60㎝ |
重さ | オス20~25㎏ メス10㎏ |
平均寿命 | 飼育下で約20年 野生下で約15年 |
テングザルの特徴
テングザルは、霊長目オナガザル科に属する猿で、特に雄の鼻が大きくて長いことから「天狗」にたとえられた名前の由来を持ちます。主な生息地は東南アジアのボルネオ島であり、熱帯雨林やマングローブ林、川沿いの湿地帯を好みます。
体長は雄で約70〜75cm、雌で60cm前後になります。尾の長さもほぼ体長と同じほどあります。体重は雄で20kgを超えることもありますが、雌は10kg前後とやや小柄です。赤茶色の背中と灰色の四肢が特徴的で、水かきのついた手足を使って泳ぐことが得意な、数少ない「泳げるサル」としても知られています。
また、テングザルは猿の種類の中では珍しく、葉っぱも食べるという特徴があります。4つにくびれた特殊な構造の胃を持っており、胃の中のバクテリアにより他の猿には消化できない葉っぱを消化することができます。消化器官、つまり胃が大きいためそのお腹が大きく膨らんでいるのも特徴の一つです。
テングザルの寿命は野生で15年、飼育下で約20年ほどです。
テングザルの性格
テングザルはおだやかで社交的な性格をしており、10〜30頭程度の群れで生活することが一般的です。
群れは雄1頭と複数の雌、そしてその子どもたちから構成されるハーレム型が多く、時に複数の雄が群れをつくることもあります。争いは少なく、鳴き声や表情、身ぶりでコミュニケーションをとる平和的な種です。
人間に対しても比較的おとなしく、観察者が刺激を与えなければ警戒心はそれほど強くありません。動物園では手渡しで餌をもらうなど、友好的な様子も見られます。
テングザルの飼い方
テングザルの飼育には、栄養バランスを考慮した食事と広い行動空間が不可欠です。
野生では若葉、未熟な果実、種子、花などを中心に食べる葉食性の傾向が強く、特にマメ科植物やマンゴーなどの木の若芽を好みます。
動物園などの飼育環境では、季節に応じた新鮮な葉物野菜や果物、特製のサル用ペレットなどを与えるほか、腸内での発酵消化を助けるために高繊維質の餌を重視します。
また、ストレスを減らすために、環境エンリッチメント(知的刺激を与えるおもちゃや構造)も重要です。水分補給も頻繁に必要なため、新鮮な水は常に確保する必要があります。
テングザルは野生下ではほぼ樹上で生活をしており、地上に降りてくることは珍しいとされています。動物園では広い運動スペースや複数の遊具、木登りができる環境づくりが必要です。水辺に好んで近づく性質を生かし、プールを設けた展示も見られます。
テングザルの歴史・起源・生態
テングザルは、進化的には約1000万年前のオナガザル類の共通祖先から分化したと考えられています。ボルネオ島に固有の種であり、他の地域には自然分布していません。
かつては島内の広範囲に生息していましたが、20世紀後半から急速な森林伐採や湿地開発によって生息地が縮小しました。特にパーム油プランテーションの拡大が大きな影響を与えたと言われています。
個体数は過去数十年で約半減し、国際自然保護連合(IUCN)により絶滅危惧種(EN:危機)に指定されています。
現在ではマレーシア・サバ州やインドネシア・カリマンタン地域などで保護活動が行われ、個体のモニタリングや生息地の保全が進められています。
テングザルの気を付けたい病気
寄生虫感染症 消化不良 呼吸器感染症 肥満 歯周病
テングザルの一口メモ
テングザルの鼻は個体識別にも使われるほど個性があり、特に成獣の雄は鼻を膨らませて鳴き声を響かせる行動が知られています。
しかし、食事の際にはその大きな鼻が邪魔になることがあり、片手で鼻を押し上げながら食事をすることもあるようです。
テングザルはそのユニークな見た目から観光資源としても注目されており、マレーシア・サバ州のラブックベイ テングザル保護区では野生に近い状態の群れを間近に観察できます。
日本国内でテングザルを飼育している動物園は限られており、唯一、神奈川県の「横浜ズーラシア」で会うことができます。
ギフトショップでは、その特徴的な姿を可愛らしく表現したぬいぐるみも販売されているので、ぜひ一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
テングザルのいる動物園
獣医師監修
本記事は、信頼性・正確性向上のために、獣医師資格保有者が監修しています。監修者の詳しいプロフィールは下記をご参照ください。
この記事の執筆者 / 監修者

- 獣医師ゆう
- 酪農学園大学獣医学群獣医学類卒業。卒業後は二次診療施設を含む複数の動物病院にて勤務。 現在は保護猫活動に力を入れている動物病院において、保護猫を対象として不妊手術や診察をしています。
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